昨年のアメリカ旅行について、いくつか記事を書いていた。
どうしても書きたい、一番書きたいことが残っていたにも関わらず、手をつけられていなかった。
アメリカに行きたい一番の目的だった、ホワイトサンズ国定公園だ。
真っ白な砂漠だ。
ホワイトサンズは、アメリカの南部にある。メキシコのすぐ近くだ。
ホワイトサンズと、ラスベガスは結構距離がある。飛行機での移動だ。
アメリカ旅行で、ここに行くことは、絶対に譲りたくなかった。
グランドキャニオンを楽しみ、国立公園をいくつかまわって、ラスベガスで休んでから
アメリカのニューメキシコ州に移動した。
ホワイトサンズは、真っ白な砂漠だ。
比喩ではなく、本当に真っ白だ。絶景を紹介する本を読んで、中でもホワイトサンズに惹かれ、行きたい思いを募らせていた。
読んだのはこの本。
「ここに降り立ったら、どんな気持ちになるのだろう?」
という思いが募って募って、止まらなくなってきていた。
そしてそれが知りたくてたまらなくなった。
私は自己意識が強いタイプなのかもしれないが、
「自分はどう感じるか?」ということにすごく興味がある。
「こういう状況になったら、自分はどう感じるだろうか」
この好奇心が大きなモチベーションとなって突き進んでいく。
自分が好きなんだろう。ナルシストかもしれない。
逆に言えば、その自己意識が私の人生を支えてくれた。
いつも「子育てがつらい」「母性がない」などの愚痴が止まらない私だが、子どもを産もうと思った理由を思い返すと、
「子どもを持ったら、自分がどう感じるのか知りたいから」という好奇心があったことも否めない。
ただ、どんなに欲しいと思って産んだところで、親と子の性格的な相性が合わないこともあるし、それはただただそのまま、受け入れなくてはいけない出来事だ。
そういうループを繰り返すことは辛いけれど、自分が出産を願っていた部分もあることは1つの救いになる。何かしらの楽しさを子育てに見つけたいとか、少しでも気分転換をしたいとかいう日頃の試行錯誤はやめられないのだが。
話しが逸れたので、またアメリカ旅行の話に戻る。
ホワイトサンズに行くために、近くのモーテル(宿)に泊まった。
とても質素だが、エキゾチックでお洒落な部屋だった。
「随分と遠いところまで来たなあ…」
日本とは、大分距離が離れたところにやってきた。
異国気分は更に盛り上がった。
夕陽が沈むホワイトサンズを訪れた。
ホワイトサンズでは夕陽を見るサンセットツアーが開催されている。
それに参加したから、初日の砂漠の観光は安心感があった。
ホワイトサンズは、石膏の砂が一面に広がっている。
だから、普通の砂漠とは違って真っ白になるのだと言う。
ツアーのガイドさんが解説してくれた。ものすごく速い英語なのでほとんど聞き取れないが、夫と協力して聴き取った。
ホワイトサンズは砂漠だが、地下すぐ近くに水が流れていて、時々お花が咲いている。
砂漠に咲いているお花は、すごく可愛い。いとおしい。
砂漠に生きるなんて、過酷すぎるだろうと思うが、こんなところにも命があるのだと感じ入る。
白い砂漠は石膏なので、太陽の熱を受けてもそんなに熱くならない。
夕方になればしっとり冷たくなってきて、裸足で歩ける。
陽が沈んでくると、空が紫に染まってくる。
白い砂も、ほんのり紫に染まってくる。
ツアーは好きなだけ過ごして、好きなタイミングで解散。ゆるくて自由なツアーだった。
夕食はマクドナルドで。
翌日は、太陽がギラつく真昼のホワイトサンズに、夫婦二人っきりで行った。
ツアーで訪れた前日と違う緊張があった。
真昼はさすがに暑い。大量の水を飲み干してどんどん無くなっていく。
地面の白さがまぶしい。景色に目がくらむ。そして開放感が半端ない。
すべてのしがらみから逃れたような気分だ。ハイテンションになって騒ぎながら夫に飲み水を渡してもらい、喋る。
「ここ、天国じゃない?」
私は浮かれてしまっておかしなテンションになっている。夫は大体いつでも冷静だ。
「でもさぁ、ここで迷ったらほんと、死ぬね」
「きっとさ、天国と地獄は隣り合わせなんだよね。すぐそばに地獄があるから、こんなに美しいんじゃない?」
「うん」
奇想天外な話をするのが楽しい。そんな話にまともに付き合ってくれる夫が愛しくてたまらなくなる。
「さすが、ミサイル発射の練習場なだけあって。天国だし地獄だよね」
ホワイトサンズはアメリカの軍隊がミサイル発射の練習場に使っている。
観光に行く前に、公式サイトで練習スケジュールを確認しておかなければならない。
週2回は練習場として、時間を決めて立ち入り禁止になっていた。
天国のように美しいけれど、本当は地獄に近い場所なのかもしれない。
私は天国だと思った。夫と手を繋いで天国に来れたような気がした。
ボディーボードのようなものをレンタルして、砂の上を滑って遊んだ。
運動音痴の私の滑りは、とても見れたものではなかったのだが、
ボードをお店に返却する時、砂にまみれた私を見て現地の女性は
「So cool!(素敵ね)」
と褒めてくれた。
アメリカ人は陽気な人が多いと思った。
ホワイトサンズに、夫と行けて幸せだった。
娘を連れて行くのは無理だった。過酷な自然は子連れには向かない。
娘が2歳だったから、一緒に行かなかったことは記憶に残らないと見込んで強行した、夫婦2人きりの旅行だった。
行けて良かった、としみじみ思う。
この先、夫婦に何があったとしても、この旅を思い出せば全て許せる気がする。
子育てが辛くても、夫とずっと一緒にいたいから何とか頑張れるような気がする。
何より、写真を見ると、あの時の感動が蘇ってきて胸がいっぱいになる。
私が見たいと言い張ったホワイトサンズを、本当に見るために、夫が頑張ってくれたことを思って胸が熱くなる。
そしてまたいつか、夫婦2人きりの旅行に行けることを夢見て、日々の重い腰を上げ、娘にご飯を食べさせる。
この記事が面白かったら、応援クリックをお願いします。