また、精神科を探さなくてはならない…。
正直、うんざりしていました。
何度も何度も繰り返してきた精神科の転院。
紹介状を携えて初診に向かうときの、何とも言えない緊張。
でも、やるしかありません。
いつまでもほっておくわけにはいきません。
手持ちのお薬の在庫だって、いつまでもあるわけではありません。
何より、精神科をお休みしていた理由は「確実に産みたい病院で産むため」でした。
産みたい個人病院で分娩予約を正式にとり、一時金の支払いも済ませたため
私は重い腰をあげて精神科を探し始めました。
まず、考えたのは
- 入院施設がある大きな精神科
- 産婦人科がないところ
という二つの条件を満たすところがいいということでした。
1の理由は、妊娠したことを契機に受診を断られたSクリニックでは
「うちのような小さなメンタルクリニックには入院設備がないので何かあったときに対応できません。妊娠期というのは状態が急変することもありますから」
と言われていたからでした。
なんだかすごく正直に、言葉通りにとらえてしまったのですが
言われるままに
「入院設備がないとダメなんだな」
と思いました。
2の理由は、とにかく産みたい病院を決めていたからでした。
精神科という場所は、とにかく人間扱いしてくれないイメージがあったので
どんなに
「もう産む病院は決めました。分娩予約もとりました」
と主張したところで、相手にしてもらえないのではないかと恐れていました。
「ここの産婦人科で産みなさい」と無下に言われるのではないか。
それが怖かったのです。
そしていつも通りインターネットで探したのですが、
私の住む地域ではそんなに都合のよい病院はほとんどありませんでした。
見るからに
「収容所」
という雰囲気を醸し出している病院ならあったのですが、
別に私は収容されたいわけではありません。
そして
- 産婦人科がないところ
という条件については妥協することにして、
少し遠い場所であれば出産する場所にはふさわしくないと思ってくれるのでは?と考え
(出産には急な移動が必要になることがあるため)、
少し遠い病院で、また産婦人科は既に分娩予約は先まで埋まっているとホームページに明記している
精神科の入院設備をそなえた総合病院(K病院とします)
を見つけました。
K病院に思い切って電話をかけました。
「こんにちは。初めてお電話します、そめやと言いますが、精神科についてお聞きしたいのですが…」
「はい。当院への紹介状はお持ちですか?」
「紹介状は持っています」
「当院の、なんという名前の医師への紹介状ですか?」
「紹介状は無記名です」
「当院の医師に宛てた紹介状を書いてきてもらってください」
(はぁ…?!?!)
ものすごく不愉快でした。
こちらには事情があるのに。
私は一生懸命事情を話して訴えようとしました。
「私は妊娠しています。妊娠したときに、通院していたメンタルクリニックに通院を断られたんです」
「はあ」
「大きな病院を探すように言われました。入院設備を備えた大きな病院に行ってくださいと言われたんです」
私は興奮していました。
声は大きくなり、怒りをこめて話していました。
なぜ、こんなに無下に扱われなくてはならないのか…!!!
「以前受診されていたメンタルクリニックで紹介を受けられませんか?」
「メンタルクリニックでは、産婦人科と精神科が併設されている病院で産みなさいと言われました。けれど、そちらのK病院は分娩予約はいっぱいですよね??」
「精神科ではなんという病名ですか?」
「統合失調症です」
一瞬、相手が息をのんだことが分かりました。
統合失調症。これを言うだけで、やはり恐れられてしまう。
なんだか悲しくて、やりきれませんでした。
「上と相談して、折り返しお電話します」
「はい…」
待つこと10分程度。
ちゃんと折り返しの電話はありました。
「こんにちは。そめやさんのお電話でよろしいですか?」
「はい」
「先ほどお話ししたように、ドクターに相談しましたが、やはり難しいです」
「なぜですか??」
「こちらの医師に宛てた紹介状をお持ちでないようですし、やはりもう一度以前のメンタルクリニックを受診してはいかがですか?」
「それは私が決めることなんですけど」
だんだん私はやけになってきていました。
なんでそんなことを言われなくてはいけないのか?
完全にクレーマーのような雰囲気だったと思いますが、引くに引けず、食い下がってしまいました。
「それが難しいようなら、自治体に相談して探す方法もあります」
…。
「とにかくそちらでは診られないということですよね??」
「…」
「診られないということですね、それだけが知りたいんです」
「…はい」
「分かりました」
今振り返ると、電話対応を担当していたその人なりに精一杯だっただろうと思います。
K病院の精神科はとても混んでいるのでしょう。
無記名の紹介状の患者は受け付けないと決まっているでしょう。
一生懸命、代案を出して親身になってくれたのでしょう。
それでも私はそのとき、すごく悲しかったです。
仕方ないこと。と言ってしまえばそれまでですが
転院に伴う悲しみは今までも経験していただけに、
古傷をえぐられるように心が痛みました。
悲しくてたまらなくて、電話を切ってからしばらく泣きました。
「病院への電話」はつくづく苦手です。
つっけんどんに断られる感じがすごく悲しくて、怒りの感情も刺激されてすごくつらいです。
気にしないでいられる心の強さは私は持ち合わせておらず、
その弱さが生きていく上での大きな障壁ともなってきました。
数日間、病院探しはお休みして
気持ちを改め、病院探しを再開しました。
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