D病院へ通院するのも数度目になり、お腹も大きくなってくる中
私が考えていたのは、「更にお薬を減らすこと」でした。
2mgで服用を続けていたルーランですが、更に減らそうと思いました。
出産したら、基本的には母乳で育てようと思っていたからです。
抗精神病薬を服用しながら母乳育児をすることに問題があることは分かっていました。
どんなに
「問題ないですよ」
と独身の頃にお世話になったBメンタルクリニックの先生が言ってくれていたからといって、
それは一つの考え方に過ぎないように感じてきていました。
母乳にお薬が移行することは間違いありません。
微量であれば問題ないとするのかは難しい問題です。
そして私の感覚としてお薬を必要としていなかったということもあります。
このあたりは、統合失調症で苦しんでいる多くの患者さん達と少し違うところかもしれません。
以前、Bメンタルクリニックの先生にも言われたことがあります。
「普通、皆さんお薬を飲んで心が落ち着くから、お薬の必要性をちゃんと分かっていらっしゃるんですよ。そめやさんのように減らしたいと繰り返し言う患者さんは珍しいです」
「そめやさんは一度大きく症状が出て、その後は落ち着いていますからね。再燃していないということはとても良いことです。これからも大きな症状の再発を予防するために、しっかりお薬を飲み続けて下さいね」
そう、くどいほどに言い聞かされてきました。
実際、統合失調症は一生お薬を飲み続ける病気だと言われていて、
お薬をいつか飲まなくて良くなるだろうか、という思いは持たないように自分にも言い聞かせてきました。
妊娠中の話に戻ります。
D病院のふくよかな女医先生に診てもらっている時。
私はお薬を減らしたいという希望を伝えました。
正確なやりとりは記憶していないのですが
そこまで難航することなく、スムーズに了承してくれたことを覚えています。
ルーランは一日あたり1mgになりました。
ルーランは4mg錠が最小の大きさなので、
薬局で割ってくれるように処方箋を書いてくれていました。
1mgのルーランはかけらのように小さくて
数えきれないほどの多くのお薬を飲んでいた頃を思い出しました。
「ずっと、戦ってきたなあ…」
そんなことをしみじみ思った時でした。
D病院の先生が私を見る目は、今までの精神科医とは明らかに違っているように感じました。
以前からずっと感じてきたことですが、「統合失調症の患者」は医者にも差別されているような気がします。
幾度となく、なんだか馬鹿にされているような印象を受けてきたのです。
馬鹿にされるというのは本当に不愉快なもので、
不愉快だから怒りを感じて、それを抑えることすら不愉快に感じる。
そして仏頂面で診察を受けていると、ますます馬鹿にされているような感覚がある。
もう、負の連鎖としかいえないこの感じ。
辛かったです。
私から言わせれば、まず医者が馬鹿にするような態度をとってきたのが悪いと感じるのですが
多くのお医者さんが「上から目線」で接してくることに関しては必ずしも精神科医だけの現象ではないかもしれません。
たくさんの病気の患者さんを診る毎日にストレスもあるでしょうし、サービス業のような接客をする義務は全くないということはよく分かります。
ただ、精神の病気に関して言うと、ただでさえメンタルの弱い患者が、さらに医者にメンタルを傷つけられることは結構つらいものでした。
医者にとっての不快な態度をこちらがとったことで「病気が良くなっていない」という印象を与えているとしたらたまりません。
社会人が仕事をするのであれば、表情を整えて礼儀正しくすることでしょう。
でも、なぜ精神科で受診するときに医者に気を遣わなくてはいけないのか…。
色々な医者を渡り歩く中で、そもそも私が過剰に周りに気を遣う性格ということもあり、「医者に気を遣って疲れる」ことが当たり前のようになってしまっていました。
しかし、D病院の先生には気を遣わなくてよかったのです。
目線が温かいかどうか。奥底に軽蔑のまなざしがないかどうか、というのは意外と分かるものだと思いました。
そういう先生に出会えたのは、たくさんの転院をしたなかでもD病院の先生が初めてでした。
診察の前後に他の患者さんが診察室から出てくるところが見えたことがあり、その先生が温かく送り出していた姿が見えました。
「良く頑張って、ここまで来れたね。来週も、ここまで来ようね」
やせ細った若い女性に対して、そんな温かい言葉をかけていました。
本当にいい先生に出会えたんだ。
私はそれを実感しました。
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