(5)【実体験済】毒親と対決することとは

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謝ってくれた母との、その後の会話は和やかでした。

母は
「あやみとの関係改善よりも、お父さん(私の父)との関係改善の方が急ぎだわ」

と言って笑いました。

母が私に謝ってくれたこと。

その時に感じた思いは、今でもよく覚えています。

 

思っていたよりは冷静で、けれど

重い荷物を肩からおろしたような、安堵するような感覚。

 

過去は変えることはできません。

それはよく分かっています。

 

だから、過去を振り返らないようにして

未来を少しでも改善するために、今何ができるかを考えて

実行してきました。

 

高校在学時から人生が狂いだし

統合失調症を発症して強制入院に至りました。

 

不器用で仕事の覚えが遅く、職場ではすぐにお払い箱にされ

何度もブラック企業や非正規の仕事を転々として疲れ果て、

仕事で稼ぐのは無理だと見切りをつけて婚活に集中しました。

 

幸運なことに素敵な男性と出会いがあり、幸福な結婚に至り

次は健康な子どもを出産せねばと意気込みました。

 無事、すぐに妊娠できて

出産直前には

持病だった統合失調症も治ってしまいました。

 

私の過去を要約すると、こんなところでしょう。

 

「人生はちょっとしたきっかけで、想定外のとんでもないところまで落ち込む」

「だからこそ、一生、闘い続けていく」

と、何度も頭のなかで繰り返したものでした。

 過去は変えられないのだから、憎しみ・恨みは水に流すべき、

と教えられます。

その考え方を否定はしません。

それは美しい考え方だと思います。

 憎しみ・恨みをずっと抱えている姿は決して美しい姿ではありませんし、

過去にこだわっていても仕方ないのだから前を向き、今からでもできることに取り組むべき。

というのはよく分かります。

 そうやって私はずっと生きてきました。

 

それでも、自分の子どもを産み

子育てに向き合うことで、

自分の中に閉じ込めていた「親への憎しみ」が噴き出してきたのです。

 

こういう状態は、一般的でない。

よくあることではない、

ということはすぐに分かりました。

 

子どもを産んで、非協力的な夫を憎むことはよくあることのようですが、

私がひたすら憎しみを募らせた対象は親。

夫には、感謝の気持ちが日に日に募るばかりでした。

 ちなみに、夫には出産から数年たった今でも、感謝し続けています。

夫は「私の幸福のために行動してくれる」という、私の人生で初めての人でした。

 

1、夫は、私にお腹いっぱい食べることを勧めてくれる。
→両親は、私をいつも腹ペコにさせ、外食での注文も嫌がり、今でも私が幼かった頃の外食時の注文をネタにして親族に言いふらしています。小さな頃から嫌味を言われ続けていたので、外食でも少しだけの注文にとどめるようになりました。

2、夫は、私を喜ばせるために、旅行を計画して実行してくれる。
→結婚前は、「旅行は楽しいもの」と思ったことはありませんでした…。

3、夫は、「あやみと一緒にいられて幸せだよ」と言ってくれる。
→両親は「親というのは悲しいもの」と常に私に言い聞かせていました。耳にタコができるほど。恩を仇で返されると感じるみたいです。

 

このように具体的な例もありすぎて書ききれないほどですが。

私の親は、子育てに手がかかった分をできる限り取り返そうと、

自分が叶えられなかった夢を託したのですから、

それは「子ども(私)の幸福のための行動」ではなかったのです。

 

よりによって、母の「叶えられなかった夢」というのが、

希少な才能を持ち合わせない限りは成功できないどころか食べていくことすらできない「音楽」で、

また、早くから進路を狭められてしまったせいで

「学ぶ機会を奪われた」に近い感覚がありました。
お金はさんざんかかったらしいですが。体系的に音楽を学ばせるには多くのお金がかかります。

 

私は中学生の頃から政治・経済に興味が強くありましたし、成績は比較的良くて

読書が大好きでしたので、普通科の高校に進むべきだったと思っています。

 

抑え込んでいた思いが噴き出してくる。

それを「忘れろ」「水に流せ」「憎しみを抱えていては前に進まない」

ではなくて、

「親本人に、直接返すべき。そうしないと、結果的に子どもを含めて新しい家族にぶつけてしまうから」

と説いてくれたのが、

「毒になる親 一生苦しむ子供」の本でした。


毒になる親 一生苦しむ子供 (講談社+α文庫)

(画像をクリックして頂くと、amazon にジャンプします。現時点で393件ものカスタマーレビューがついています。ご自身が経験したことを懸命に書かれている方が多いです。レビューを読むだけでも救われる思いがするほどです。毒親との対決については否定的な意見を読むことができます。)

私が抱えていた、誰にも分かってもらえない思いをその本に共感してもらえたことに感激し、

迷わず実行しました。

当初予定した手紙にはなりませんでしたが。

でも、だからこそ、母と和解できる結果になったのかもしれません。

 母は私に謝ってくれました。
もちろん、それですべてが解決するわけではありません。
相変わらず、私の娘に対する愛情は強くありません。
「親というのは悲しいもの」と耳にタコができるほど聞かされたことを思い出せば
「母の夢を叶えるために自分の半生を捨てたのに、なんて言いぐさだ」
と、今でも怒りは湧いてきますし
「子どもを苦労して育てても、自分の夢を託してはいけないのなら、いったい何をモチベーションにして育てればいいのだろう」
と今でも思います。
私も親の子なので、やはり子育てに損得を持ち込み、無償の愛を持つことはできないのだなと、肩を落とすこともあります。

 

けれど、母との話し合いを機に、心の中でマグマのように燃えさかっていた「親への憎しみ」

はコントロール可能なものになったと感じます。

そして、自分に向き合うきっかけを私に与えてくれた娘に感謝できるようになりました。
結果的に、娘が産まれて自分の過去に向き合ったことで、
私は精神的に楽になることができました。
その時はすごく苦しかったのですが、向き合った甲斐があって
予想もできないタイミングで自分の中から憎しみのマグマが噴出してくることはなくなり、
自分の過去と憎悪に関する「取扱説明書」を作成できたような、そういう感覚があります。

思い返せば、私の統合失調症が治ったきっかけも
妊娠による転院でした。

夫にそう話すと
「面白い。ひねくれていて、あやみらしい」
と言って笑いました。

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