「婚活」は、精神的には苦しいものです。
私はインターネットの婚活サイトに登録していました。登録・利用料は一切無料のサイトでした。
真面目に婚活をしていたので、結婚相談所を考えたこともありました。
しかし
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手持ちのお金が少なく、結婚相談所への入会はイチかバチかのギャンブルになってしまう。
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「心身ともに健康」という条件が求められるので、私はあてはまらない。隠して入会したら虚偽の申告になる。
という2つの理由で諦めました。
インターネットの婚活サイトはその2つの面では気楽で、ただその分、男性も結婚に対するモチベーションがそれほど高くないと感じました。
私は何人もの男性とやりとりし、実際に会いました。
一度きりで次の約束をできなかった男性も数多くいましたし、何度かお会いできた男性もいました。
私は少し惚れっぽい性格なのか、何度かお会いすれば好きになってしまい、相手からフェードアウトされたりお断りされると、その度に傷つきました。
もともと統合失調症を発病したくらいですから、メンタルは弱いです。
傷つきやすく、その傷も深くなりやすい。
婚活は本当に苦しかったです。
統合失調症という病気を抱えていることも、「引け目」のような気持ちを常に抱いて男性に会うことになり、つらいものでした。
以前の記事で書いた、Bメンタルクリニックには婚活の時期もずっと通院していましたが、先生に相談すると一貫して
「結婚の具体的な話が出てから持病についてお話しすればいいですよ」
とおっしゃいました。
それは正論ではあります。
実際、出会ってすぐの、これから縁ができるかどうかも分からない男性に自分のことを深く話す必要はないのかもしれません。
それでも、私は惚れっぽいので何度か会えば気持ちは盛り上がり、相手も私に多少の好感を持っていると感じると
「病気のことを告白して嫌われたらどうしよう」
と思い悩んだものでした。
男性の立場からすれば心を病んだ女性との結婚なんて嫌でしょうし、騙しているような気分になってしまうこともつらかったです。
実際には何度か会うだけで終わり、真剣な交際に結びつくことはほとんどないので、その心配は杞憂に終わりましたが。
それにしても、引け目を感じながら男性に会っていることは態度の端々に出ていたでしょうし、婚活市場にいる数多くのライバル女性には健康で隠すものが何もない方もたくさんいるでしょうから、こんな自分が結婚できる自信は全くありませんでした。
私が結婚を真剣に目指した理由は、経済的な不安が大きかったのは否めません。
仕事は非正規で、給料は上がりませんし、契約は頻繁に切られて新しい非正規の仕事を探すことの繰り返し。
たまに勢いこんで正社員の仕事に就けばブラック起業に縁があり(ブラック起業にしか雇ってもらえないような経歴なので…)、仕事を続けられずに失意の底で辞めてしまう。
手元の資金にはゆとりがありませんし、両親もいつまでも養ってくれるほどのお金持ちとは思えない。
自分で稼ぎ、自立することはほぼ絶望的でした。
私が婚活するにあたり、比較的有利な条件だったのは「年齢」だったと思います。
私は結婚を目指すしかない、という意識になったのが比較的若かったため、結婚願望を持つ女性たちの中では比較的若かったと思います。
後に出会い結婚に至った夫も、婚活の経験がありましたが
「婚活で傷つくことはなかった」
と言っていました。
相性が合わなかったと割り切って、淡々と次の人と会うだけだったと。
夫は「温かい家庭」に憧れがあり、婚活に取り組んでいました。
子どもがいて、一緒にご飯を食べて、楽しい思い出を共有できる家庭。
夫の持つ「家庭像」は出会った時から今まで、ブレたことはありません。
メンタルが強い人はこうも違うものかと、驚いたものです。
そんな夫との出会いですが、婚活サイトではありませんでした。
特定されたくないので詳しくは書けませんが、友人の紹介でした。
友人の紹介とはあなどれないものです。
その男性(後に夫となる人。Eさんとします)は、一流大学を出て一流企業に勤めていて、条件を聞けば私にはもったいないほどの人でした。
私はEさんと初めて対面する前から、友人に「私は心を病んでいて薬を飲んでいる」ことを伝えました。
Eさんは、簡単に治らない病気を持っていることを友人から明かされたからでした。
私がEさんの病気を受け入れることは「出会う前に即決」でした。
友人に見せられた写真にあったEさんの笑顔に一目惚れしました。
Eさんの過去の恋の話も聞き、その誠実さに感動しました。
友人をまじえて、Eさんに初めて会った時のことはよく覚えています。
写真よりはかっこよくない顔。仕草は少し女性的で、あまり「男の色気」を感じるタイプではありませんでした。
お互いの趣味について語り、私は「読書が好きです」と語りました。
学生の頃に頑張ったこと。好きだったこと。
会話は盛り上がり、二人で本屋さんに行って一緒に色々な本を見ました。
短い時間、まだ交際に至るかどうか手応えはなく、帰途につきました。
Eさんが私に魅力を感じてくれたかどうかは分からないし、私もその日から強く惹かれた訳ではありませんでした。
婚活で会った他の男性たちと違ったのは、私が心の病気であることを既に知っていてくれたこと。
だからといって交際に至る保証なんてありませんので、全く自信はありませんでした。
「あやみさんは、なんていうお薬を飲んでいるの?」
Eさんにそう問われたのは、二人で会い始めて2回目のことでした。
「ルーランっていうお薬を飲んでいます」
私は正直にそう伝えました。
その当時、私は服用する抗精神病薬をリスパダールからルーランに変更し、更なる減薬を目指していました。
さらっとお薬の名前を聞き出したEさんが、自宅に帰ってからインターネットで病名を調べたことは言うまでもありません。
その時は「調べたよ」などと報告されませんでしたが、ずいぶんと後になってから聞かされました。
その時、Eさんは私の「心の病気」が「統合失調症」であることを知りました。
私は鈍感でしたから、そのことに気づいていませんでしたが。
Eさんは私を好きになってくれました。
生きることに不器用で、報われない努力ばかりしていて、それなのによくしゃべりよく笑う私を、好きになってくれました。
今でも思い出すと涙が出そうになります。
3回目に会った時、Eさんはロマンチックな場所で私に告白してくれました。
「あやみさん、僕と付き合ってください」
「はい」
迷わず即答でした。
今でも、そこから自分の人生が始まったような感覚があります。
Eさんと出会ったことは奇跡のようで、感謝してもしすぎることはありません。
私もEさんの病気を受け入れましたが、Eさんも私の病気を躊躇なく受け入れてくれました。
持病という最大の欠点すら、最愛の人に出会うと「愛される喜び」を深めてくれるのかもしれない。
そう思うほどに私はEさんに惚れて、結婚して子どもができた今でも惚れ続けています。